ディズニーランドで一番恐いアトラクションはイッツアスモールワールドだと思う。

考察
By: Kevin Poh

たくさんの楽しい思い出と、ほんの少し切ない思い出、もう二度と会えない人(かつての恋人だったりもういない家族)との大切な思い出等々。そんなものがありすぎるせいでもはや団塊以降の現代日本人の精神的支柱の一部にまで浸食・定着してしまった東京ディズニーランド。かくいう私もそこまで好きを公言していないものの隔年くらいでは行っています。

そのディズニーランンドで一番怖いアトラクションはなんですか?私は自信を持って「イッツ・ア・スモールワールド」であると断言できます。

異彩を放つ恐怖のアトラクション

ディズニーシーを含んでも間違いなくダントツの恐怖を与えてくれるのがイッツ・ア・スモールワールド、通称イッツァ(と私は呼んでいるけど一般的な略称は不明)。おそらく大多数の読者の皆様方は同意しかねるでしょう。いわゆるマウンテン系のような高速による身体的刺激なんてものは無いですし、お化けを全面に押し出したホーンテッドマンション、髑髏と暴力を具現化したようなカリブの海賊のようにわかりやすいイコンでは無いのだから賛同できないと言われても致し方ない。でもイッツァはマジで個人的に超怖い。思い出しただけで鳥肌立ってきた。

怖がっているのは果たして私だけなのだろうか

私はこれまでの人生でディズニーの話題が出るにつけこの質問をほんとうにたくさんの人に聞いてみた。するとやはり一定数の割合で「ああわかる、怖いよねあそこ」という層がいたのだ。それは結局どんな話でも一定数は同意する奴がいるってことだよ、試しにそいつに「ポンデリングは球体が連なってる必要ないよね?」って聞いてみなよ絶対同意するから、と突っ込まれてしまっては終了なのだが。否、彼ら彼女らは私の感じるものとほぼ同種の違和感を覚えていたんだよ。異口同音に「気持ち悪い」「薄ら寒い」と宣うのである。ね、そうだよね、わかるよね。

そもそもイッツァとはなんなのか

ディズニーランドが開園した1983年のオリジナルラインナップに既にそれはあった。なので誰でも一度は乗った事があるとは思うが改めて説明すると、屋内でボートに乗りながら世界各国の衣装を着た子供の人形が舞い踊る様を眺めるだけという至ってシンプルな箱庭的アトラクションである。音楽は御馴染み「小さな世界」が各国の言葉やアレンジで流れている。以上だ。その古さ故に他のアトラクションに比べると見劣りしてしまいがちだし、実際特別なCGや複雑な技術は使っていないだろう。人によっては退屈、実際居眠りするために乗ってるパパさんなんかもいるとか。イッツァのパブリックイメージはそれこそ「平和」「子供」などで、ちょっと古いけどなんだか和むから好きという意見をよく聞く。ははは私はあんな狂気に満ちた場所で和むなんて信じられないけどねマジ。
話を戻そう。イッツァの歴史は東京ディズニーランド開園から約20年ほど遡る。初出は1964年のニューヨーク万博のパビリオン。そこからアメリカのディズニーランドに移設されたそうだ。今では世界各国のディズニーランドにあるんだけど、そもそもが万博に、しかもユニセフのパビリオンとして出されたものなんだよ。ユニセフからディズニーに制作を発注してそこで主にデザインしたのがかのメアリーブレア女史だ。そう、この人物が元凶といっても過言ではない。

メアリー・ブレアとは

メアリー・ブレアは20世紀に活躍したアメリカ人の芸術家だ。ディズニーに関する仕事ではイッツァの他にシンデレラや不思議の国のアリス等の色彩設計をしたこと等で知られている。あの印象的で独特な紫の使い方などは紛れも無くメアリーの仕業だろう。グラデーション?なにそれうまいの?とでも言わんばかりの清々しいまでのベタ塗り感が二次元をあくまで二次元足らしめている。想像がつかない方はメアリーブレアで画像検索でもしてみて。百聞はなんちゃらだから。
で、数年前、日本でメアリー・ブレア展が開催されたんだけどその時の感想をdigってみたところやはり一定数の「怖い」という意見が散見されるんだよね。彼女の生い立ちや込められたメッセージや真意なんてものは寡聞にして存じないんだけど何かしら狂気のようなものを感じてしまう。なんだろうねこの感じ。

各所に散りばめられたトラウマスイッチ

一歩足を踏み入れるとまず空間の広さに驚く。あれ、こんなに建物の中広いの?というのはまあディズニーアトラクションならよくある事なのだがそのだだっ広い空間がまず異様。壁一面にいわゆるメアリーカラーのベタ塗り。それにいきなり囲まれるのだからもう酔う。下には水が張られ、天井は深淵を思わせる漆黒の闇。もうさ、この時点で怖いから。
ボートに乗り進んで行くと子供の人形が可動域の範囲内で同じ動きを繰り返している。メアリーの二次元的表現が三次元化されてもはやそれは現実のものとして迫ってくる。しかしながら壁の背景は二次元なのである。これは2.5次元とも言える体験でありそれはつまりメアリーの絵本の中に「半分引きずり込まれた」状態になっているとも言える。人形って怖いよね、そういえば私は腹話術の人形も苦手だ。周りを見渡せば巨大な花、奇妙な太陽、首がエンドレスで回り続ける動物、複数の手が生えた謎の影。鳴り止まない子供の歌声。駄目だイッツァは各所で絶妙にトラウマにコミットしてくる。帰りたい。

its a small worldに通底する思想とメッセージ

延々と注がれるメッセージは「世界は一つ」という究極に理想主義な理念だ。我々はいい大人だから世界が一つでない事を知っている。人々は殺し合い奪い合う。だが人の良い部分も知っている。物事には両面あって決してどちらかの極にだけ寄る事なんて無いと思っている。だからこそ世界は一つなんて言われてしまうと薄ら寒くなるし、それを真顔で言っていると思うと新興宗教に似た近寄りがたさを感じてしまうんだ。
休日の朝、せっかくだから目覚ましもかけずに気持ちよく寝ていると突然インターホンが鳴る。モニタに映し出される笑顔の張り付いた人物が「世界の皆が幸せになれるように祈ってください」という。貴重な睡眠を邪魔された私は「ふざけんなてめえらで勝手に祈ってろ」と露骨に不快な態度で怒鳴る。それを受けた笑顔の人物は「あなたにも幸せがありますように」と貼付けた笑顔を崩さずに返す。そんな時に私は思う。怖い、と。
話が逸れたが、そのような怖さを感じてしまう。あまりに飛躍しているのだがどうしてもイッツァのメッセージを素直に受け入れられない大人な自分が居るのだ。せかいはせまい、せかいはおなじ、せかいはまるい、ただひとつ…いや、やっぱりそれは違うよ。世界は同じじゃないよ。だってボートに乗せて散々世界の「違い」を見せつけてくれたじゃないか。アトラクションの最後に真っ白な部屋に行き着く。そこはみんな白い衣装を着て「違い」を均された無個性な子供たちが幸せそうに歌っている。これがもしイッツァの理想なら、私達は、少なくとも私個人はこんな世界を望んではいない。そんな絵空事は人類補完計画や陰謀論のニューワールドオーダーで十分だ。

まとめ

どうしてイッツァが怖いのか、それは複数要素が絡み合った結果「偶然に」出来てしまったんだと思う。メッセージそのものの怖さ、可視化させたメアリーブレア、具現化したアトラクションとしての完成度(逆にCG使いまくってたらあまり怖くないと思う)、時代etc…いろいろなものが作用してあんなにも怖い空間が生まれてしまったんだろう。もはやあそこはこの世の特異点、現代の霊場と言っても過言ではない。統計上8割の人に同意されないけれども。
そして今日もあの場所では本当に様々な人々を乗せてボートが回り続ける。私の様に恐れおののきながらもどうしても乗ってしまう恐いもの見たさな人、目眩くドラッギーな中毒性にアテられた人、他のアトラクションの箸休め的に休んでいる人、お互いの顔しか見ていないカップル、本気で楽しんでいる大人たち、子供たちを乗せて。

コメント

  1. まきょん より:

    イッツアスモールワールドのせいディズニー行けなくなった 洗脳されたかのような世界を見てトラウマになった

    • sacry より:

      共感して頂ける方がやっと現れてほっとしました。やはり私だけじゃないんですね。
      ただ私は寧ろ、あの怖さを味わいたくなって導かれるようについ乗ってしまいます。

  2. yuki より:

    私も昔からイッツアスモールワールドが怖いと思っていました。
    でもその薄ら寒い怖さを例えるのが本当に難しくて、人に言っても分かってもらえませんでしたので、同じ思いの方がいた!と安心しました。

    • sacry より:

      残念ながら我々は圧倒的マイノリティのようです。
      しかし決して自分だけではないんだという事実をこの記事を公開することにより確認できました。
      各ボートにひとりくらいはいるかも…いやいないかな…

  3. yapana より:

    ああ~、何とも言えない不気味さがありますよねイッツァスモールワールド。
    休憩どころかかえって精神が不安定になります。笑

    もう閉園してしまいましたが宝塚ファミリーランドという遊園地にも酷似したアトラクションがあったんですよ。(wikiを見たところディズニーランド開園の15年前に既にあったようです、名称は大人形館)
    地理的に近いのでよく遊びに行ったのですが私が未だにイッツァに対する苦手意識を拭えないのは幼少時のこれの影響が大きい気がします。

    できた当時としては主流だったのかいわゆる西洋人形?がどことなく不気味なのと(イッツァはまだ人形自体は可愛げがあるのですが)
    中盤のジャングルゾーン、ここはもう全然違います。
    イッツァの動物→デフォルメ、友好的
    大人形館の動物→リアル志向、好戦的
    なんか子供たち捕まってるし……
    なにをもってああなったのか、自然との共存はそう甘くないということなのか……?

    まあイッツァに比べれば怖さがわかりやすい(=大人より子供が怖がる)のと、異様な背景や同一化された部屋によるメッセージ性などがあった訳ではないのでこの記事の趣旨とはちょっと違うかもしれません。
    やはり大人になってからだとイッツァの方が怖く感じられるかも……

    長文失礼しましたm(_ _)m

    • sacry より:

      宝塚ファミリーランド、噂に聞いたことがあります。当方関東ですので行く機会には恵まれませんでしたが…
      この様な意見を頂戴するにつけ常々思うことがあるのです。遊園地は一歩間違えるととてつもなく怖いのではないかと。

      どうしてだろうと長年考えておりましたが一つの結論めいたものにつきあたりました。
      それは「ひとびとに魔法をかけて夢と希望を具現化しようとしている」からだと。
      とてもこれは逆説的なので、うまく説明できないのですが…
      普段人々を楽しませるもののダークサイド、とでも言いましょうか。例えるなら善人の中に垣間見えてしまった狂気、とでもいいましょうか。

      廃墟や古い遊園地が怖いのはきっと我々が魔法のほころびを見てしまったからかもしれません。
      紙幅が尽きそうなのでこれはいつか別記事で詳しくまとめられればと思います。

  4. まーしー より:

    このサイトに出会って驚きました!
    私はとても小さい頃イッツアスモールワールドで大泣きした、と親に言われるほど 昔からイッツアスモールワールドに恐怖やトラウマを感じてしまいます。
    実は外装も怖いです。
    同じ気持ちの人がいてとても嬉しいです

    • sacry より:

      外装も怖いですよね。デフォルメされた造形や色彩だけでもクるのに中央には時計の様な『顔』です。
      普通に、冷静になって考えると建物に顔がついてたら常軌を逸してますもんね。
      あたかも生き物の様な建物の中で人形がエンドレスに踊り続ける……やばい

  5. うさぎ より:

    昨日、行ってきました。
    そうなんです、私も
    「なんか怖い…」
    という気持ちを拭いきれませんでした。昨日の今日なので、まだ今も怖い「感覚」が残ってます。

    この記事を見て、やっぱりあの「感覚」はあってたんだ…と思いました。

    家族5人で行ったのですが、楽しそうにしている子供たちを見ていると、なんか怖かったと言えませんでしたし、言うつもりもないですが…
    この「感覚」を早く忘れたくて、書き込みしてしまいました。

    たくさんの人形が、みんな真っ白の衣装を着ていて
    なんていうか…
    お葬式みたい…
    って、感じたんだと思います。
    その横ではしゃぐ私の子供たち。
    子供たちを連れていかれそうに感じのかもしれません。

    昨日は、そんなことまで考えれなかったけど
    この記事を見て、今、怖いと感じた「感覚」がわかった気がします。

    同じ感覚の人がいて、本当によかったです。

    たぶん、私はもう入らないです。

    • sacry より:

      あなたも「気づいてしまった」人なんですね…ふふふ。ようこそこっち側へ。
      なんてのは冗談ですがあの場所は本当に特異点なんですよ。
      おかしいのは私だけなのか、周りの方こそおかしいんじゃないか、一体なんなんだ、と気持ちを揺さぶられますよね。
      大丈夫、あなたはおかしくないです。もちろんお子さんも。普通の人たちの中に一定数「気づいて」しまう人がいるってだけですよ。

      なんか言い回しがオカルトっぽくなってしまいましたね。
      なんてことはありません、あそこが怖く感じるカラクリは記事の通りです。偶然なんですよ。誰かが呪いをかけたわけでも霊がいるわけでもありません。
      付け足して言うならば、きっと繊細な人ほど違和感を覚えてしまうんでしょう。よく言えば感受性が豊かなんです。ほら、私のようにね。

  6. 工藤さん より:

    ディズニーランド、シーの中で1番苦手で嫌いなのがイッツァです。あんなの気持ち悪いよね。

    • sacry より:

      私も一番苦手です。しかしなんでしょう、大嫌いにはなれないのです…気持ち悪すぎるのにまた乗ってしまう。アンビバレントなこの気持ち。

  7. おかゆ より:

    私も怖いです。
    あの場所に夜中一人でボートに乗せられたら…と思うと究極の罰ゲームです。
    うっすらキーキー人形が言っていたような…

    • sacry より:

      夜中一人はマジでやばそうですね。下手なお化け屋敷なんかより全然怖いと思いますほんとうに。きゃあああ

  8. 風我 より:

    お前ら夢が無さすぎ。現実の事は考えるな!

  9. 名無しのトラウマ より:

    大いに共感する一人として、ここにコメントします!

  10. わわん より:

    イッツアが好きです。
    メアリー・ブレア氏の作品も好きですし、後世のグラフィック界に影響を与えているのは間違いないです。
    奇声を上げて喜び、興奮するアトラクションに疲れた時にボーっとするために乗るのが好きです。

    ですが、こちらの記事は大変秀逸だと思いました。

    遊び疲れた身体にじんわりと染みて広がるうっすらとした虚無感は、これかと。
    あの感覚をここまで正確に文章に起こせるのは凄いです。

  11. イッツァトラウマ男 より:

     同感です。
     イッツァはマジでヤバいです。
     洗脳するような音楽のリピート,繰り返し動く人形。
     家族で行き,子供に「わ~スティッチがいるよ!」と言って指さしながら,寒気が止まりませんでした。
     前のボートにいた男3人組は,周りを見渡すことなく,終始真正面を見て硬直していた様は,どんな感情を持っていたか容易に想像できました。
     乗り終わった後も,妻には「やべぇよやべぇよ」と出川ばりに言い続けていました。

  12. あれ以来ディズニーランド に行ってない男 より:

     私も2~3歳くらいの頃、スモールワールドへ初めて行きましたが、入った瞬間、恐怖で仕方がなかったです。トラウマが強すぎて、あの頃の記憶が無いくらいです。そして大人になった今でも、映像どころか静止画も見られません。今、考えてみると、あの頃の恐怖は重度のうつ病や恐怖症に匹敵するくらいだと思います。そしてその合併症として、「水」、「薄暗い場所」、「以上に広い空間」、「人形(西洋、東洋問わず)」、「表情の無いもの(生物の有無を問わず)」、等が、耐えられないほどに怖くなりました。スモールワールドは一生、克服できないと思います。

  13. 通りすがり より:

    同感です。
    怖いです。なんか新興宗教の集会ってこんなんかなと思いました。

    あとだんだん泣けてきました。ホントはこれが理想なんだろーけどそんなことあり得ないよなーみたいな。

  14. はなこ より:

    先日久しぶりにランドに行き主と同じ感想を抱いたのでここに来ました。
    私はひねくれているからそう感じたのか?と同行した母親につぶやきました。
    世界は一つではないし、だから戦争や移民問題でいま世界は大荒れの状況。
    理想と現実のギャップに薄ら寒さを感じた。
    昨年リニューアルしたようで、終わりの下船あたりの壁に『しあわせは世界をつなぐ』と書かれていてどこかの宗教施設か?と錯覚しました。同じ感覚を抱く人が居たことに安堵します。

  15. 通りすがり より:

    このサイトを見て同じ感想の人がいる!と嬉しくなりました。
    自分もスモールワールドに初めて入った時に、なんだかわからない怖さを感じてディズニーランドの中で一番苦手なアトラクションになりました。
    以来、お化け屋敷と呼んでます(笑)

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